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総合系釣り師ナベ

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『ザ・タウン』 

「映画芸術」の最新号で編集長の荒井氏と主催者の寺脇氏の二人が連載史上最も褒めたていたので、
新宿ピカデリーで観てみた。

劇場内で映画監督のH木氏と思いがけずばったり会う。
『軽蔑』(中上健次原作)を撮り終え、今は最後の仕上げ中だとか。
彼もこの映画の好評判を聞いて、来たようだ。

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「この街(ボストン)で生まれた男達は、父親の職業(ギャング)を当たり前の様に継いで行く」というナレーションから始まるこの映画。
チャック・ホーガン原作の「強盗こそ、われらが宿命(さだめ)」を、ベン・アフレック監督・主演で映画化した全くボク好みの犯罪・恋愛ドラマだ。

冒頭から強盗達のアクションとカーチェイスにド肝を抜かれる。
アイリッシュ系ギャング団のリーダーであるダグ(ベン・アフレック)はタウンの仲間4人と銀行強盗に入り、予定外の出来事で人質にとった銀行の女支店長クレア(レベッカ・ホール「恋するバルセロナ」)と道ならぬ恋に落ちてしまう。

ダグが正体を明かさない儘クレアに近づき、好きになってゆく過程にストーリー上不満も残るが、そこは貧困なアイリッシュと裕福なヤッピーとの恋愛というよくあるドラマツルギーに委ねて見過ごそう。
それより、二人の関係とダグの親友でギャングのジェム( ジェレミー・レナー「ハート・ロッカー」)の関係位置が極めてスリリングで面白い。
クレアは当然FBIのアダム( ジョン・ハム)に保護され監視下にある。
仲間が気付くのが早いか、FBIの罠に嵌るのが早いか、息つく間もなく次の強盗計画が花屋でありアイリッシュ・マフィアのボスであるファーガス( ピート・ポスルスウェイト「ブラス!」)から持たされる。

ザ・タウン②

この現金輸送車強奪の銃撃戦とカーチェイスがまた凄まじい。
ボストンのダウンタウンの細い路地を小型のSUVが走り回る。
この街(タウン)を知り尽くした強盗達の逃走は、ひよっこコップの追跡するパトーカーの敵ではない。

ザ・タウン②

とにかく見せ場満載!
また、(多分)ジェムの妹のクリスタ( ブレイク・ライヴリー)が彼らの事件に絡んでくる。
この映画のウェブサイトのHPでは彼女の名前が二番目にある。
そのクリスタはダグの心がもう自分ではなく、クレアにある事を知る。

ザ・タウン③

一方、ダグは強盗から足を洗うおうとする。
クレアも銀行を辞め、ボランティアに生きようとする。
そして、二人はタウンを出て新しい生活を始めようとする。

ところがタウンの掟は、ダグが足を洗う事を許さない。
ボスの花屋のファーガスはダグが幼い頃に失踪したタグの母親の真実を明かす。
また刑務所に居るタグの父親を陥れる。
ダグは最後の仕事に乗らざるを得なくなる。

そんな時、タウンの子を育てるクリスタがFBIのアダムの司法取引の誘惑に嵌る。
FBIがダグ達の最後の仕事に陥穽を仕掛けたのだ。
その最後の仕事がフェンウェイ・パーク球場の襲撃だ。
そう、ボストン・レッドソックスのホームグランドだ。
この球場でダイスケや岡島が投げていると思うとゾクゾクしてくる。
只、試合開始前の球場に何故そんな大金があるのか判らないが、とにかく彼らはケチなコンビニ泥棒とは違う。
世界で一番強盗が多い街のプロ中のプロのギャングだ。

最後の銃撃戦の迫力の凄まじさは言うに及ばずだが、
あのコンクリートに当たる着弾のリアルさは本物のマシンガンをぶっ放したとしか思えない。

ザ・タウン③

とにかくエンターテイメントとしては良く出来ている。
そして、映画に出てくる役者たちが男も女もすべてカッコ良い。
これが日本の映画の大作になると、どうしてこんなイモ姉ちゃんやイモ男が並んでいるんだろうと思うキャスティングになる、全く情けなくなってしまう………。
アクションシーンだって、どうして今の日本の監督は下手クソなんだろう。
亡くなった深作さんや、長谷部さんは凄く巧かった。
なのに、今の日本映画には巧い監督は随分いなくなった気がする。

話しもどして、
さてこの映画、面白くはあった。
だけど荒井氏や寺脇氏が二人そろって褒めたというこの映画、
それほど褒めるに当たるかな?

ハッピー・エンドにしたのは製作者たちの意図であり、異は唱えない。
しかしあの場合、もし警官たちに取り囲まれたら俺は死に物狂いで戦うと言ったのは親友のジェフだった。
果たしてジェフは完全武装したFBI達に必死に闘いを挑み、ハチの巣になった。
そのおかげで、タグは無事生きのびることが出来る。
これは反対だろう。
昔の『冒険者たち』という映画でもそうだ。
アラン・ドロンは死すが、リノ・バンチェラは生きのびた。
そしてリノは二人で探しあてた黄金の分け前を、二人の恋人だったジョアンナ・シムカスの遺族へ届ける。

タグはFBIが待ちうけるクレアの家へは行けず、彼女の畑に金を埋める。
それをクレアはタウンに寄付するのだけれど、あの金は死んだタグが稼いだ金を生きのびたジェフが届ける方がずっと良い。
だって、ジェフは以前にもタグを助けたおかげで8年もムショに入っている。
そして、又してもタグを助けて犬死する。
反対だろう、どう見ても!
強盗はしても人は殺さないというダグの行動哲学が崩れる時、ドラマが生まれる。
人は必要なら、邪魔な奴は撃ってもいいんだよ!

更にFBIのアダムがいい味を出しているが、
どうも彼一人が鬼平犯科帳の鬼平みたいに一人で頑張っているのが気にかかる。
ボクはそうでない方が良いと思った。
FBIの連中はプロだけれど、仕事が終われば妻や子の待つ家に帰る男たちの筈だ。
劇中にもそんなセリフがある。
彼らはそれこそ「法と正義に則り」粛々と犯罪者を追いつめてゆく。
その為にタウンの強盗達が持たない頭脳を持ち、冷徹な捜査官が鼠を追いつめるように包囲網を狭めてゆく。
そんな怖さの方が、この映画には適しているとボクは考えるのだが………、どうだろう。

細かい欠点はどうでもいい。
一番の問題は「立ち位置」だ。
そこが少しだけ、気にいらない。
それだけ…。



劇場を出た後、H木監督と顔を見合わせた。
思えばこの劇場、今のシネコンではない時にもよく映画監督とばったり会う事があった。
ボク等はお互い用事があったのでそこで別れたが、
ラブストーリーの上手い彼はどう思ったのかな…?
今度聞いてみよう。






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2011. 02. 09. (Wed) 15:03  [映画コメント:1  トラックバック:0